『出来れば、でいいんだけど。身体が空いてる人はハリーの元に集まって、ハリーの話を聞いてあげてほしいんだ。……多分、私じゃダメだろうから』
アキからそんな連絡を受けたシリウスは、どうも不思議な要件だなと首を傾げながらもハリー・ポッター邸へと赴いた。
ハリーに関することならば、シリウスに『行かない』などという選択肢はない。後見人ということもあり、ハリーのことはいつまでも愛息子のように思っているのだから。
──しかし、アキが『自分ではダメ』と言うのが、シリウスにはどうも解せない。
ハリーとアキは傍目から見てもとても仲の良い兄弟だ。ハリーはアキを信頼しきっているし、アキもハリーを心の底から大切に思っている。
そんなアキが『自分ではダメ』と判断するような事態とは、一体何なのだろう? アキで対処しきれない事態であれば、誰であっても無理ではないだろうか?
胸に一抹の不安が芽生えるも、シリウスにできることはたったひとつだ。
仕事を倍速で片付けると、ピーターを追い立てポッター邸に向かう。シリウスとピーターを迎えたジニー・ポッターは、どこか浮かない笑顔を浮かべたまま二人を応接間へと案内した。
「お二人とも、来てくださってありがとうございます。ハリーは今、二階の自室にいると思います」
「なぁ、一体何があったんだ? アキには軽くしか教えてもらってないんだ。アキでもダメってんなら、私達も力になれるかは分からない」
ジニーに問いかける。
ジニーは眉を下げながらも「アキでも……うん、そうでしょうね」と苦笑した。
「ううん。むしろ、アキだからこそダメなんだと思う。……他の人ならまだいいかもしれないけど……アキだけは、今のあの人に近付けちゃダメなのは本当」
「…………?」
そこで、シリウス達と同じく駆けつけてくれたリーマスとニンファドーラが合流した。彼らと共に、皆でジニーの話を聞く。
ハリーの暴走によりアルバスが本気で声を荒げてハリーを否定したこと。学校まで乗り込むなんて何考えてるの、父さんなんて大っ嫌いと言われたこと。なんてことを言ってしまったのだとハリーが思いっきり落ち込んでいること。
それだけを聞くと、どこにでもあるような親子喧嘩なだけにも思える。少なくとも呪いが飛び交うような次元の話ではなさそうだと、まさしく呪いが飛び交う親子喧嘩を繰り広げてきたシリウスとしては思わざるを得ない。
アルバスのことも、シリウスはよく知っている。それこそオムツを換えたことだってあるのだ。
兄のジェームズより大人しく引っ込み思案なものの、アキの娘であるソラ・ポッターの手を引いて行く面倒見の良さを持ち合わせていること。鋭い感受性を持ち合わせていること。はしゃぐ時は心の底から楽しそうな笑顔を見せること。緑の瞳をきゅっと細めて笑うその仕草が、ハリーとそっくりなこと────。
「──とにかく、ハリーに会いに行こう」
ここでどれだけ思考を巡らせたって埒が開かない。ハリーが二階にいるというなら本人に訊いてみるべきだ。そもそもシリウスは人から話を聞いて熟考するよりも、自らの目で状況を確認し判断したい
皆と共に二階へ上がる。ノックをしたが返事は無かった。鍵は掛かっていなかったので、ドアノブを捻り押し開ける。
中は灯りがついておらず真っ暗だった。その中にぼんやりと、人ひとりのシルエットを視認する。ハリーだ。
一瞬立ち竦んだシリウスに代わり、リーマスが柔らかな口調で言った。
「ハリー、灯りをつけていいかな」
シルエットは軽く頭を動かした。視認して、リーマスは灯りを点す。
闇祓い部局長と魔法法執行部部長を兼務する、世紀の英雄ハリー・ポッター──しかし彼の自室は、そんな英雄らしさの欠片もないほど質素で慎ましやかなものだった。
カーテンと絨毯だけが、かろうじてグリフィンドールの深い赤色で彩られている。しかし他の家具も調度品も、どこをとってもシンプルで実用性重視なことが見てとれる。
中でも一際目を引くのは、古く擦り切れて端がほつれた毛布だ。今は使われてはいないようだが、それでも大事そうに畳まれては棚の手に取りやすい位置に収められている。
ベッドの端に腰掛け項垂れていたハリーは、顔を上げると訪問客に向かってうっすらと笑みを浮かべてみせた。
「なんだ、皆……アキに言われて来たの? 全く、アイツはいつも余計な気を回す」
「おい……アキも、君のことを心配してのことだろう? その言い方はないんじゃないのか?」
皮肉げな物言いに、思わず窘める言葉が溢れる。ハリーは一瞬バツの悪そうな表情を浮かべたが、すぐさま顔を無表情に切り替えた。
「余計な気、は確かだろ。現にアキの号令で、こんなにも錚々たるメンツが集まってしまった」
「……ハリー。確かに私はアキから話をもらってここに来たけれど、アキ以外の誰からであっても君の元に駆けつけただろう。君が悩んでいる、困っていると聞いて『待て』ができる私ではないよ。だって私は、君のことを実の息子のようにも思っているのだから」
宥めるように言葉を紡ぐ。『実の息子のように』の部分で、ハリーは痛みを堪えるように眉を顰めた。
シリウスと目を合わさぬまま、ハリーは呟く。
「…………実の息子のように思っているのなら……じゃあどうして、僕を迎えに来てくれなかったんですか」
「っ……、それは……」
思いもよらぬ言葉だった。
思わずたじろいだシリウスに、ハリーの追い討ちが容赦なく迫る。
「父と母への贖罪だか何だか知りませんが、無実の罪でアズカバンで耐え忍ぶなんてせずに、僕を迎えに来て欲しかった。一分一秒でも早く、僕らを連れ出して、助けて欲しかった。毎日毎日、誰かが助けてくれるのをアキと二人で空想していた。
……アルバスは言ったんだ。『父さんは親がいないから、子供の気持ちが分からない』って。……好きで親がいないわけじゃない。好きで『生き残った男の子』になったわけじゃない。僕は好きで英雄になったわけじゃないのに!」
リーマスが慌てて「ハリー」と名を呼ぶ。その声でシリウスも我に返った。ハリーを止めようとするリーマスを咄嗟に制する。
聞かなければ、と思った。
息子のようにも思っているのならば──今も、そしてこれからも、ハリーの親代わりでいたいのならば。
息子の声に耳を塞いではいけない。
(ここで、逃げちゃなんねぇだろ)
初めてハリーの本音を聞いた。
良い子で、どこまでも良い子で、親代わりと言ったところでシリウスが手を貸したことなど一度もない。
普通の人の何倍もの不幸を背負いながらも、それでも前を向き続けた。
親友の置き土産であり、またシリウスにとってハリーは大切な友の一人だ。
「……アルバスの言う通りだ。私は親を知らない。だから子供のことが分からない。親として、子供にどのように振る舞えば良いのか分からない。……アルバスに、そう言われた瞬間……アキのことが、心底羨ましくなってしまった」
「アキを? どうして……」
呟きかけたニンファドーラが、ハッとした顔で口を噤んだ。シリウスはリーマスと視線を交わす。
──アキが『自分ではダメ』と言った意味がようやく分かった。
「アキも同じなら良かった。アキも僕と同じように、親の顔を知らぬままに育ってくれたなら救われた。……僕だけだ。僕だけ親がいない。僕だけ親元で育った記憶がないから、子供の気持ちが分からない」
自嘲気味に笑い、ハリーはベッドサイドのアルバムを手に取った。随分と古びて手垢のついたそれを、大事そうにそっと捲る。
隣でリーマスが小さく息を呑んだ。
アルバムの中身は、ハリーの両親──ジェームズとリリーの写真が並べられていた。
以前、ハリーから聞いたことがある。一年生修了時、ハグリッドから両親のアルバムをもらったこと。今でも事あるごとに見返していること──。
「家を出るとき、持ち物をどう仕分けるかについてアキと話をした。僕らは双子だから、共有のものも多くてさ。このアルバムだったり、あと僕らが──本当は僕だけが──ダーズリー家に捨て置かれた時に包まれていた毛布だったり、そういった物達。
……アキは『全部ハリーにあげるよ』と言った。『ぼくが持つ資格はないから』と。だって、アキの本当の両親は……」
そこで一旦ハリーは息をついた。
手で顔を覆ったハリーは、絞り出すように言葉を溢す。
「血が繋がっていなくとも、僕らは真の兄弟だ。その思いは今も昔も揺らがない。あの瞬間僕は、アキを羨むまいと思った。……変かな? でも、そう思ったんだ。この先ずっとアキと兄弟でいるために、アキを羨まず、そして憐れまずにいようと思った。アキだけが持っているものがあると同時に、僕だけが持っているものもある。全部受け入れてこその兄弟なのに、僕は……。
……アルバスに責められた瞬間、真っ先に『アキならこんなことにはならないんだろうな』と思った。アキなら子供達とも上手くやれる、慕われる父親になっている、どうしてなんだとあの時思った。親がいないのは僕と一緒だ。愛されずに育ったのは僕と一緒のはずなのに。幣原秋として親に愛された記憶があるアキのことが心底羨ましい。アキは親の愛を幣原越しに知っている。僕はそれすら知らないんだ。親の愛を知らない僕は、確かに親失格なのかもしれない。だから、そうと気付かずアルバスに無神経なことを言ってしまったのかもしれない。そのことを思い知って……アキのことが、心底妬ましくなって、アキから逃げるようにホグワーツから帰ってきてしまった……」
「ハリー、どうか落ち着いて」ハリーに駆け寄ったニンファドーラは、ハリーの背中をそっと撫でる。
シリウスは思わずリーマスと顔を見合わせた。リーマスもどこか困惑した顔のままシリウスを見返す。
そんなことないと告げてあげたい。そんなことはない、君はいつも頑張っていると励ましたい。
しかし今はそんな慰めを、他ならぬハリー自身が必要としていない。
シリウスも子供がいない身だ。それでいて「君は良い父親だ」などと言うのも説得力に欠けるし、自分の失言に落ち込むハリーに声を掛けるにあたって相応しい言葉とも思えない。
ならばリーマスとニンファドーラ、テディの親である二人ならばと視線を向けるも、彼らもまたどう対応すれば良いのか戸惑っている様子だった。
当たり前だ。ハリーの悩みを解決するのは、愛された幼少期を過ごした記憶を持つ者には不可能と言える。
自らと共に育った、幣原の記憶を持つだけのアキですら拒絶してしまう、そんな今のハリーに誰が何と声を掛けられるだろう?
シリウスが『何も喋らず、ただ寄り添う』という消極的解決策を図ろうとした────矢先のことだった。
「本当にいつまでも、悲劇の主人公ぶるのが得意な男よ」
嘲るような色を伴った声は低く昏い。
耳朶を震わす嫌味な音に、シリウスは思わず振り返った。
裾を引き摺る重たいローブを身に纏い、相変わらずの陰気さを顔の皺に刻みつけたまま、セブルス・スネイプは冷たい目でハリーを見下ろしていた。
「スネイプ、先生……」
頭を上げたハリーは、呆然と目を見開いて呟く。
ふんと鼻を鳴らしたスネイプから、ハリーを庇うように立ち塞がった。
「スネイプ、何をしに来た」
「『何をしに』とは可笑しなことよ。シリウス・ブラック、私も貴様と同じだ。アキ・ポッターに呼ばれたからに決まっている」
「アキめ、一体どうしてコイツまでも……」
無限に舌打ちが溢れる。
学生時代からの因縁は、何十年が経とうとも薄れはしない。どうして幣原秋はこの男と親友だったのか、今でも理解できないほどだ。
アキがこの男を信頼していることは知っている。この男がハリーのことを密やかに守り続けていたことも、それがリリー・エバンズへの盲目的な愛所以だとも聞き知っている。
その愛を手放しで絶賛する気には到底なれないが(むしろ重過ぎる感情に引いてしまったが)、それでもハリーによって大衆の前で恋心を暴露されたのには少々同情してしまった。
死の淵をアキに救われたのは自分と同じだ。最後、彼が秋ではなくアキを選んだからこそ、『今』がこうして続いている。
……それはそうと、腹の底から湧き上がる不快な感情にも嘘はつけず。
諸々含めて、シリウスにとってのスネイプは今でも「できれば顔を合わせたくない嫌な奴」だ。
苦虫を噛み潰すシリウスの顔を愉悦混じりに見返したセブルスは、続いてその目をハリーに向けた。ハリーはぎくりと姿勢を正す。
「スネイプ先生……」
「『先生』は不要だポッター。元より望んで得た職ではない。……だがしかし、貴様の泣き言だけを聞いて帰るのも寝覚が悪い。良い機会だ。ここは敢えて、かつての貴様の『恩師』として、貴様の勘違いを正してやるのも吝かではない」
相変わらずの嫌味さは健在だ。ハリーも当時の感情を思い出したのか「『恩師』って……」と眉を顰めている。
息子のミドルネームに名を付けるほどの恩義は感じていても、やはり嫌悪は先立つようだ。
(俺と同じく息子のミドルネームに名を取られている身だが、俺の方がハリーに好かれているのは言うまでもない。何せ、長子と次男という違いもあるしな!)
「そもそも貴様は物事を見てきたようにしか捉えないのだ。何事も自分が中心のように考える。思考の外側への想像力が足りん、貴様の弟から『本を読め』など言われたことはないか?」
「……アキから? いえ、そんなことは……」
「ふん、相変わらず兄にはとことん甘い男よ。いいか、貴様は常に極論を語りたがる。今の貴様の泣き言には、貴様に駄々甘なブラックでさえ眉を顰める程の毒が仕込まれていたのだぞ」
優越感に唇を歪めるも、スネイプが淡々と続けた言葉に思わず驚いて片眉を上げた。ハリーは目を瞠ってはシリウスを見返しているが、シリウスだってスネイプの話題振りは予想外だ。
ハァとスネイプは大袈裟に嘆息してみせた。
「いいかポッター、貴様が今述べた論理はこうだ。『自分には親がいないから子への愛し方が分からない。親に愛された知識があるアキ・ポッターは子への愛し方を理解している』──フン、何処を取っても破綻した論理展開だ。ならば『親がいたにもかかわらず愛されなかった子供』についてはどうなる? その子供達は親になっても子供を愛せないとでも言うつもりか? ブラック、貴様も言いたいことの一つや二つあるだろう。この視野狭窄の愚か者に何か言ってやれ」
スネイプにお膳立てをされたのは癪だが、しかし話の糸口は見えた。
気まずげに唇を噛むハリーと目を合わせる。
「あー……ハリー。私自身、親に疎まれてばかりの子供時代を過ごしてきた。あまり、話したことはなかったかもしれないが……」
もう随分と思い出すこともなかった実の両親について、記憶の澱を掬っては濾す。
幼い頃から掛けられ続けた名門貴族としての重圧。それらに反発するようにグリフィンドールに入ったシリウスに、プライドが高かった母は激怒した。
ヒステリックに喚く母と、シリウスに一切の関心を示さなくなった父。両親が望んだ『名門ブラック家の長男』にはついぞなれなかった。出来の良い弟に全てを押し付けるようにして、ホグワーツ卒業と同時にシリウスは家を飛び出した。
両親の死は獄中で耳にした。
大した感慨を抱かなかったのは、吸魂鬼がすぐ傍を
……思えば、自分も。
アルバスと同じように、組分けで一人だけ
シリウスがぽつりぽつりと話す内容を、ハリーは噛み締めるように聞いていた。
もう二十年も前、グリモールド・プレイスの家系図を見ながら多少そんな話はしたかもしれないが、改めて話すと何やら思うこともある。
「……君は、優しい人だと思う。少なくとも私は、君のような人が自分の親であったならと強く思う。また同時に、君がジェームズやリリーの元で慈しまれて育たなかったことを悲しく、申し訳なく思う。……君を迎えに行くことができず、本当に……すまなく思っている」
アルバスとの関係は、この先ハリーが向き合うべきものだ。
しかし、それ以外は──それこそ『親がいない自分は親失格』などという思い違いだけは。
今ここで、正さなければならない。
顔を上げたハリーは小さな声で呟いた。
「……僕も……ごめんなさい。あの頃はおじさんもおばさんも、僕らをどう扱えば良いか分からなかったんだと思う。それに親から愛情を受けて育ったとしても、ダドリーのようになることもあるし。
それに、父さんと母さんに愛されていたことは、僕が一番実感していたんだった。だってほら、母さんからの愛がなければ、僕は赤ん坊の頃に死んでたわけだしね?」
最後は軽くおちゃらけるように、そう言ってハリーは笑う。その笑顔を見て、シリウスもホッと肩から力を抜いた。
「それに……それに、幣原も。アキの中から、ずっと僕らを見守ってくれていたんだね。幣原のことは今でもちょっと複雑だけど……アキを僕の弟にしてくれた。そのことだけは、本当に感謝してるんだ」
「……おう。……まぁアレは親というより『超強いスーパーヒーローが何となく隣で居眠りしていた』って感じの距離感だとは思うが、何にせよ良かったよ」
戦争後、秋がハリーを引き取っていればあるいは……とは思うものの、それも全てはゆめまぼろしだ。今ハリーとアキがいて、彼らの子供達がいる。この世界を尊く、そして愛しく思う。
あははと笑ったハリーは、改めて面々に向き直った。
「シリウスも、スネイプ教授も……皆、来てくれて本当にありがとう。情けない姿を見せてしまって申し訳ない。アルバスとは早めに話し合うことにするよ、もうじきクリスマス休暇で皆が帰ってくる頃合いだしね」
「ま、休みが取れたらだけどね……」
何処となくげっそりとした顔でニンファドーラは呟く。思わず苦笑した。
夏頃に死喰い人一斉検挙があってからというもの、闇祓い局は連日ゴタゴタバタバタ、休日出勤上等な凶悪シフトのようだった。本当に頭が下がるものだと、人生で一度もまともな定職についたことのないシリウスは思うのみだ。
その時スネイプが黙って踵を返した。その後ろ姿に、ハリーが慌てて「すみません、お茶でも飲んでいって……」と声を掛ける。
スネイプは足を止めることなく嘯いた。
「茶など家で飲む。こんなところで飲む茶が美味いはずがないだろう。……スリザリンに入ったのは私の名を頂いたせいだ、などと言われても困るのでな」
「はは……、わざわざ来てくださりありがとうございました」
ハリーは苦笑してスネイプを見送る。
シリウスは咄嗟にスネイプの後を追った。階段に差し掛かる手前で「おい!」と黒い背中に呼びかける。
「…………今日は助かった。礼を言う」
認めるのは癪だが、今回スネイプが来てくれていなかったら事態はもっと拗れていただろう。それを思えば、いくら気に食わない相手だとしても礼は言っておいた方が良い。
振り返ったスネイプは、シリウスを見ては片頬を吊り上げた。
「貸し一つだ。即急に返せ」
「…………」
なんとか笑みを浮かべてやり過ごす。
中指を立てたシリウスの右手は、追いかけてきたリーマスに「やめなさい」と叩かれ窘められた。
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